- 更新日 : 2025年2月20日
小口現金の月末処理とは?繰越や補給の記帳について解説
キャッシュレス時代においても、経理業務において「小口現金」を完全に廃止しないで、ある程度残して業務の柔軟性を維持するという考え方があります。現金の取り扱いを残す場合には、現物保管やアクセス制限、上限額の設定など社内ルールに基づく、適切な処理が求められます。この記事では、月末における小口現金の処理を中心に解説します。
目次
小口現金の月末処理とは
小口現金とは、会社で日常的に発生する少額の支払い等に対応するために準備される現金のことです。文具購入や来客時のお茶菓子など、緊急かつ少額の支出に対して柔軟に対応できるよう、常に管理を求められます。
一般には、小口現金として定額を設定し、使用した分を定期的に補充する「定額資金前渡方式」で運用されます。これに対し、残高が少なくなったときに随時補充するような方法もあります。定期的に確認・補充を行う定額資金前渡方式のほうが、管理の容易さや不正防止に優れていると言えます。
小口現金出納帳は月末ごとに締めの処理を行う
多くの会社では月次決算を採用しているため、少なくとも月次単位で小口現金の残高を一定に保ち、内容を確認して不正や誤りを防止する必要があります。
そのためには、使用した小口現金の内容について月単位で経理部門が確認し、未処理のものは適切な勘定科目に振り分け、その月の残高を締める処理を実施します。「締める」というのは、もともとは「帳簿を締める」という意味であり、当期(当月)と翌期(翌月)との区切りを付ける作業として残高を確定させ、繰り越す準備をすることです。
月末に行う次月への繰越処理
月末に小口現金出納帳を締めて、次月に繰り越す場合の手順を簡単に解説しましょう。利用する会計ソフトや管理する小口現金によっては、処理内容が異なるため、ここでは一般的な処理として「定額資金前渡方式」を採用したケースを解説します。
1) 小口現金の有高確認
- 実際の現金有高確認
実際に金庫などにある現金について、月末時点での残高を数えます。
- 出納帳残高と実際の現金有高照合
小口現金出納帳の残高と現物の残高が一致するかを照合します。
- 照合不一致の場合は原因を調査
照合の結果、差異があればその原因を調査します。最終的に一致しない場合には、「現金過不足」で処理しますが、過不足額を計算したメモ等は残しておきます。
(後日、解決することもあります。)
2) 費用の集計
- 小口現金の支出について費目ごとに集計
小口現金についてどのような科目について発生したかを集計します。
会計ソフトによっては、一覧が表示されることもあるため内容を確認します。
このとき、それぞれの支出に対する領収書等があるかを確認し、ない場合には徴求します。
- 未払金や立替金等の確認
小口現金を原資とする未払金や立替金について支払漏れはないか、次回の支払はいつか等の確認をします。
3) 補充申請・残高繰越
- 使用分の金額を集計、現金補充
定額資金前渡方式(インプレストシステム)では、月中に使用した分だけの現金補充をします。したがって、一定額に戻すための補充金額分の申請等をします。補充により一定額になったことを確かめます。
- 残高を翌月に繰り越し
一定額になったことを確かめたら、翌月に残高を繰り越します。
会計ソフトでは締め処理等により繰越処理が行われるのが一般的です。
月初に行う前月からの繰越処理
小口現金残高の補充や繰越処理を「月初」に行う場合には、上記の月末処理を月初に行います。前月末に上記2にある費用の集計までを行い、補充申請以降を月初に行います。
月末の会計処理は多忙であるため、月初に補充するのもよい方法です。ただし、部門ごとに小口現金を保有している場合などにおいては、社内での小口現金の補充方法は統一しておかなければなりません。
小口現金出納帳とは、小口現金の補給や支払状況を管理するための補助記入帳です。
小口現金出納帳の利用方法としては、小口現金での取引が発生する都度記録することとし、できるだけ日単位における出納帳残高と小口現金残高の一致を確認します。
このように日々管理することに努めることによって、いつ、どのような目的で小口現金が利用されたかが分かり、不正利用リスクを軽減することが可能です。
小口現金を月初に補給した場合の小口現金出納帳の記帳
ここで、小口現金を月初に補給した場合の小口現金出納帳の事例について見ていきましょう。キャッシュレスを意識し、現金出納帳を簡素化したものを利用する例とします。
例)月初に一定額になるように補充する場合(一定額=30,000円の場合)
この場合、前月より繰り越される金額は補充前であり、現金は月初に補充します。そのため、10月1日に30,000円になっていることを確認します。月単位で締め処理をするため、月末には次月繰越額を確定させます。
月初に補充する方法は、必要な金額が月初において予測しやすい場合に適しているでしょう。
小口現金を月末に補給した場合の小口現金出納帳の記帳
次に、月末に一定額になるように補充する場合(一定額=30,000円の場合)は次のようになります。
月末にその月に使用した金額を補給し、翌月の期首残高を一定に保つ方法です。月末に現金を補給するとともに、出納帳を締め切り、次月繰越額を記帳するようにします。
この方法は、月ごとの使用額が変動する場合に適しており、社内ルールにより月内に複数回の現金補充ができるようにしておけば、スムーズに業務を進められるでしょう。
小口現金管理を含む経費精算の効率化には、マネーフォワード クラウド経費の導入がおすすめ!
現金の取り扱いには、保管用の金庫や出納確認のための手続きなどが伴うため、管理に手間がかかります。また、社会全体的な流れからすると、小口現金からキャッシュレスに移り変わってきていると言えます。
商取引の場面でも、どうしても現金取引でなければならないということが減ってきているため、小口現金の管理も徐々に少なくなっています。
そこで、小口現金の管理を含む経費精算の効率化を考えるなら、経費精算システムの導入をおすすめします。
マネーフォワード クラウド経費では、従業員の立替金精算をスマートに済ませるために、スマホなどとも連携させることが可能です。
例えば、従業員が経費を立て替えた場合、経費のレシートをスマホのカメラで撮影し、日付・金額・支払先を読み取ってデータ化し、マネーフォワード クラウド経費に取り込みます。スマホ以外にも交通系ICカードやクレジットカードなどと連携し、経費データを自動取得することで、時間短縮ができるだけでなく手入力によるミスも減らせます。
多くの会計ソフトとの連携も可能であるため、マネーフォワード クラウド経費の導入を機に、小口現金の取り扱いをなくすことも可能です。
小口現金の動きを整理し、キャッシュレス化も検討しよう!
小口現金の取引が多い場合、補助簿としての小口現金出納帳を作成し続けるのは手間がかかります。実際には、会計ソフトにおける小口現金の元帳や補助元帳を利用するのが近道だと言えるでしょう。
さらに、小口現金のほかに、交通系ICカードやクレジットカードなど入力の自動化を意識したツールを経費精算ソフトとともに利用することによって、処理のスピードが早くなるだけでなく、正確性も向上します。
現時点での小口現金の動きをよく理解することも、身近なキャッシュレス化への第一歩でしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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