- 更新日 : 2025年2月20日
任意監査とは?メリット・デメリットや法定監査との違い
会社で行う監査とは、経営や財務状況について検証し、結果を報告することです。
監査の一つである「任意監査」とは、会社が自主的に行う監査のことです。法定監査とは異なり、行う会社の規模などの定めはありません。
この記事では、任意監査の種類やそれぞれの特徴、行うことのメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、法定監査との違いについても確認しておきましょう。
目次
任意監査とは
任意監査とは、会社が監査の目的や対象、内容を決めて行う監査のことです。内容等に関して、法律で決められているわけではありません。会社もしくは第三者が、監査人(監査法人・公認会計士など)に依頼して行われます。任意監査の場合、監査人は法的責任を負いません。
任意監査を行う主な目的は、以下の通りです。
- 上場準備
- 営業譲渡や企業売買
- 投資家や取引先からの依頼
- グループ会社からの依頼
任意監査の種類
任意監査には「内部監査」と「外部監査」があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
内部監査
内部監査とは、社内担当者や監査人が行う監査のことです。主に以下の点をチェックします。
- 経営について
企業のリスクマネジメント、内部統制、コーポレートガバナンスについての監査
- 業務について
業務マニュアルの整備状況と実施についての監査
外部監査
外部監査とは、外部の監査法人や公認会計士によって行われる監査のことです。大企業では外部監査の実施が義務付けられていますが、実施義務がない中小企業でも、取引先等に自社の健全性を証明するために行うことがあります。外部監査では、財務状況や業務が円滑に行われているかがチェックされます。
任意監査のメリット
任意監査のメリットは以下の通りです。
- 組織の状況を確認できる
- 自社の透明性をアピールできる
- 不正を早めに見つけることができる
組織の状況を確認できる
任意監査を行うことで組織の状況を確認できます。経営状態はもちろんのこと、内部統制が適切に整備、運用されているかもチェックできます。
特に監査法人など外部に監査を依頼した場合は、客観的な視点からシステムの改善点や不備などを指摘してもらうことが期待できます。
自社の透明性をアピールできる
任意監査は法律で決められた監査ではなく、自主的に行うものです。よって、自浄能力がある会社、健全経営に努める会社とみなされます。取引先や融資を行う金融機関から、信頼できる会社と評価されるでしょう。
不正を早めに見つけることができる
法令違反や不正を早めに見つけるためにも、任意監査は有効です。不正は取引先との関係に悪影響を及ぼすおそれがあります。早くに不正を対処すれば、会社の利益を守ることにもつながります。
任意監査のデメリット
任意監査には現状の確認や早期に不正への対処ができるといったメリットがありますが、デメリットもあります。こちらも押さえておきましょう。
準備が必要
任意監査を行うためには、経営や財務に関する書類を準備する必要があります。特に外部に監査を依頼する場合は、指示どおりに準備を進めなければなりません。
また、規模がそれほど大きくない会社で監査に専念できる人材を準備できない場合は、日常業務と監査業務を兼任する必要があり、担当者に多大な負担がかかることがあります。
監査法人との調整に手間がかかる
監査法人や公認会計士といった外部の専門家に監査を依頼すると、多くのやり取りが生じます。準備や日程調整に手間がかかる点には注意が必要です。
特に煩雑なやり取りや準備が生じる場合は、任意監査に多くの時間やコストがかかることがあります。
任意監査と法定監査の違い
任意監査は会社が自主的に行う監査ですが、法定監査は法律で義務付けられている監査です。法定監査を行うことが定められている会社の条件と、受ける監査は以下の通りです。
対象企業 | 受ける監査 | 備考 |
---|---|---|
上場企業 | 金融商品取引法監査 | 金融商品取引法監査では「財務諸表監査」「内部統制監査」を受ける必要がある |
会社法監査 | 最終事業年度時点で資本金が5億円以上、または負債額が200億円以上の大会社 | 会社法監査では「内部統制監査」は義務ではない |
法定監査は、外部の監査法人や公認会計士(「会計監査人」と呼ばれます)が行うこととなっています。社内担当者が行うことは認められていません。
会計監査人を設置せず法定監査を行わない場合は、会社法976条22号により100万円以下の過料が科せられる場合があります。
任意監査を計画する前にメリット・デメリットを理解しておこう
任意監査とは、会社が自主的に行う監査のことです。法律で義務付けられている法定監査とは異なり、対象の会社や監査の内容は定められていません。
任意監査を行うことで、不正の早期発見や会社の透明性の証明が期待できます。取引先への健全性アピールにも利用できますので、経営のことを考えれば行ったほうがよいといえるでしょう。
しかし、監査のための準備に時間やコストがかかる、監査法人に依頼する際はやり取りが煩雑になるというデメリットもあります。自社でも任意監査を行う場合はメリットだけでなく、デメリットも理解しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
予実管理とは?目的・必要性とポイントを解説
会社の経営者にとって、会社の経営がうまくいっているのかどうか判断することは、必要不可欠です。会社の経営状態の判断材料として重要となるのが「予実管理」です。ここでは、予実管理の意味や目的について解説します。 予実管理とは 予実管理とは、その読…
詳しくみる話題の販売促進費用補助制度を徹底解説!
販売促進費用補助制度とは? スタートアップ経営者、起業家の方で、新規ユーザーや新規顧客の獲得、または自社サービスの認知拡大に頭を悩ませている方は少なくないでしょう。その際、広告を打つか、展示会に出展するのか、ダイレクトメールを送るのか、その…
詳しくみる連結納税は得か損か?
連結納税とは、一企業ではなく、その企業が属するグループ全体に対して、法人税が課税される制度です。この制度を用いると、企業グループ内の各企業の黒字と赤字を通算して、「企業グループ=ひとつの法人(納税単位)」として扱うことができます。ここでは、…
詳しくみる中小企業の経理は大変?インボイスの影響や大企業との違い、やりがいを解説
中小企業基盤整備機構によると、日本の全企業において中小企業の占める割合は99.7%とのことです。日本の企業のほとんどは中小企業と言ってよいでしょう。また、日本の従業者の約7割は中小企業で働いている計算になるようです。この記事では、中小企業の…
詳しくみる起業したらいつ税理士をつける? 契約タイミングの目安は「1年間の売上」
起業した方から、「どのタイミングで税理士をつけたらいいですか?」と質問されることがあります。その質問に答える前に、税理士紹介サービスを手掛ける私がまずお伝えしているのは「税理士をつける目的」です。 そもそも税理士にお願いできることとできない…
詳しくみる預り証とは?記載項目や書き方をテンプレート付きで解説
物品や金銭を預かった際、その証拠書類として預り証を発行します。預り証の書き方には明確なルールはないため、記載内容や書き方で迷う人も多いでしょう。本記事では、預り証に記載すべき項目や書き方を解説します。金銭を預かった場合に活用できる預り証のテ…
詳しくみる